konpe's 夜の仕事記

民間セクター開発、BoP、Clean Tech

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国連研修@NY

金曜午後から週末いっぱい、ニューヨークにてインターンの学生向けの研修を受けてました。

これまで電話とメールでのやり取りしかなかった国連の担当者、 5校程のビジネススクールと公共政策大学院から集まった約20人のインターン仲間が初対面。ぼやっとしか見えていなかった仕事の内容・ 背景が、ようやく分かってきました。半ば、珍しい国への旅行気分でしたが、どうやら、思っていたよりもずっと大変そうな仕事。。。 それがますます楽しみと感じてしまうのは、緊張感の抜けた学生生活の反動か、プレッシャーに慣れてしまったコンサルタントの悲しい性か?

自分のためにも、研修+もらった資料の内容をざっとおさらい。

背景

研修はインターンの中身の前に、国連の概要、インターン先であるUNDP(United Nations Development Programme)とその他国連ファミリーの各機関との関係、UNDPの事業の全貌、等々について、ほぼ1日をかけた講義から始まった。 そんな知識までいるの? と思いながら聞いてたら、どうやらここをちゃんと分かっておくのがキモであることがあとで判明。

自分は国際開発業界のしくみなんて全然知らなかったので、豆知識としても結構おもしろい。UNDPの事業領域 (BusinessではなくPractice Areaと呼ぶ)は、1) 貧困・不平等の削減、2) 民主政府の確立、3) 環境とエネルギー、4) 危機予防と災害復興・戦後復興、5) HIV/AIDS、の5つ。エネルギーをやるのはUNEPじゃないか、 保健医療をやるのはWHOでは、とか思ったりするが、 UNDPはいろんな専門性をもつ諸々の国連機関をコーディネートして恵まれない人に成果を届けるのが使命、ということだそうだ。 世界で130カ国ある国連の事務所というのは実はUNDPの事務所。ここに、児童教育に関係のあるプロジェクトならユニセフの人を、 性差別問題となればUNIFEMの人を、資金投下となれば世界銀行の人を呼んできて一緒に仕事をするらしい。

UNDPのクライアントは主に途上国の政府で、5つの事業分野を総じて達成しようとしていることは「Capacity Building(能力構築)」。これは国連の助けを借りなくても自国で経済発展できるようにする、という意味で、 政策立案にかかわるマーケティングや戦略企画のプロジェクトをやりつつ、ツールやスキルをクライアントに移転する、 コンサルティングにも似た性格。違うのは、必ずしもクライアントが明確に望まないこと(たとえば「民主政府の確立」事業で腐敗をなくす、 選挙の透明性を上げる、みたいな仕事)も自分たちが信じる価値観にもとづいてやってしまう点。

いや、、、それはそれで似てるかも。本当に違うのは、意思決定の遅さとか購買等に関わる手続き類の複雑さだろうか。これは、 所詮私企業しかも非公開のコンサルティング会社と違って、 あらゆる方面のステークホルダーから透明性なり説明責任を求められる公共機関としては、しかたがないのかもしれない。

国連改革と民間セクター開発

日本で国連の改革というと安全保障の話ばかりが出てくるが、開発を扱うUNDPではずいぶん前から改革が進んでいる (ことになっている)。90年代後半から2000年にかけて途上国開発の成果が問われ、寄付金が激減し、財政難に陥ったUNDPは、 本部の人員を25%も減らし、成果指標を入れ、知識共有の仕組みを整え、 たんなる資源再配分をこえて成果を上げられる組織へと大きく舵を切った。2000年に採択され、 2015年までに達成を目指すMillenium Development Goalsという8つの「業績目標」は、「1日1ドル以下で暮らす極貧層の人口比率を半減」など、 かなり具体的。

政府だけでなく民間とも付き合う、という動きもこの頃から。同じく2000年に発足したGlobal Compactは 「国連の理念を政府だけでなく企業にも」という呼びかけで、人権、労働基準、環境などを幅広くカバーするガイドラインを設定。 日本でも最近になってCSR(Coporate Social Responsibility) が大きく取り沙汰されているのはご承知の通り。そんな取り組みの甲斐もあってか、 政府の拠出が大部分だったUNDPの予算に民間の基金がたくさん入って財政は持ち直し、05年には2000年の2倍(約5,000億円) に増えている。

とはいえ、貧困の削減というUNDPの事業目標の達成のためには、CSRの啓蒙・推進だけではとうてい不十分。 多くの企業にとってCSRはあくまで企業イメージ向上策のひとつ、本業の利益・余力を回す先。むしろ、途上国で足りていない基本的な財・ サービス(食、水、通信、エネルギー、金融)を本業として貧困層に手の届く価格で提供し、かつ利益が出せる事業を作ることができれば直接、 貧困削減に貢献できるし、利益が出ている限り企業はこぞって競争しながら事業拡大し、持続可能な開発、生活水準の向上、 雇用創出にもつながるだろう。そんな目的を掲げて2003年にUNDPの中で立ち上がったのが、今回のインターン先であるGSB(Growing Sustainable Business initiative)。

GSBが作ろうとしている事業のイメージは、農民がなぜ貧困から抜けられないか、という例をみると分かりやすい。 市場価格の情報がなくて安く買い叩かれているなら、通信インフラの普及が助けになる。設備投資ができないために生産性が上がらず、 与信もないため投資資金が得られないならmicro financeが必要になる。天候不順・ 収穫変動が収入不安定を生んでいるならmicro insuranceもいるだろう。現地でより大きな付加価値をとりこむには、 農作物のまま輸出せず組合を作って加工食品までやるとよい。そのためには輸送、貯蔵のインフラの改善も必要。どれをとっても、 個別にうまくいく例は出始めている。この先、川上から川下までバリューチェーンをつなげて、海外から大手の資本を呼び込んで、 現地でお金が回る仕組みを作るには何から手をつけるのがよいか。事業マインドがまだない現地の人たちに、 アントレプレナーシップが芽生える仕掛けをどう作るか。収入レベルが上がって購買力がつき始めたらしめたもの。いったん出来上がったら、 大手資本を主体に他国にも展開できるスケーラブルなモデルが望ましい。云々。

インターンシップ・プログラム

さて、GSBの理念は立派かもしれないが、中身はそう簡単な仕事ではない。BOP(Bottom of Pyramid) 向け事業のむずかしさ以上に、旧態依然とした大組織であるUNDPの中で、理解・協力を得ていくのが大変。

改革真っ最中とはいえ、大きな組織に新しい考え方が行き渡るにはやはり時間がかかる。まして、UNDPの職員はほとんどが、 市場原理とか事業構築という概念とは対極の、開発ひとすじでNGOやNPOを渡ってきた人たち。民間と付き合うだけでも未知の世界なのに、 利潤の追及に手を貸すなんて。「貧困層からさらに搾取しようというのか?」・・・そりゃあ、そう思われても無理もなかろう。

加えて、開発の現場は130カ国に散らばる現地事務所。GSBが立ち上がったニューヨークの本部からは、やっぱり遠い。 会社に例えれば本社と地方の営業所。国によって、メインの仕事が内戦後の復興だったり、女性の参政権だったり、津波だったりと、 ぜんぜん事情が違う。本社からビジネスなんて訳のわからない話が降ってきても、営業所長がイヤと言えばそれまで。

本部のGSBの陣容は、現在たったの4人(うち3人がM社の卒業生、それはそれで強烈)。設立から2年間、コツコツ仲間作りを進めて、 8カ国に1人づつGSB専任のスタッフを置くところまできた。エリクソンと組んだ格安携帯電話をはじめ、 成功事例がいくつも出つつあるタンザニアは、 たまたま現地事務所の所長さんが強い味方になってくれたから。

成功の兆しが見えて勢いがついたところで一挙にGSBを拡大したい、でもどの国にどんな機会があるかもさっぱり分からん。 ということで、まだGSBの専任スタッフもいない約20カ国の新規ターゲットに元気のいい学生を1人づつ送り込んで、 現地事務所との協力体制をつくりながら一気呵成に事業機会の絞り込み、初期の事業計画作り、パートナー候補の洗い出し、 対話の開始まで進めてしまおう、というのが今回のインターンシッププログラムの趣旨だった。もちろん、初の試み。

ミッション

この辺まで背景の理解が進んだところで、参加者一同、「え~、まじかよ~」みたいな表情になってくる。

話は続く。くれぐれも、彼ら(現地事務所の人たち)とのコミュニケーションの仕方には気をつけるように。事業を考える前に、 データを見て、彼らの話をよく聞いて、現地の貧困の状況をよく理解するように。貧困削減を第一目標にしている彼らがすすんで取り組むよう、 彼らの業績評価の指標をよく理解して、彼らが抱えている課題に応える事業を見つけるように。 あなた方が3ヶ月でいなくなった後を引き継ぐのは彼らです。彼らのアジェンダに載らないことはやらないように。 国によってはGSBの専任スタッフが夏までに雇える国もあるかもしれませんが、この人とのコミュニケーションにも気をつけるように。 このように大変な仕事を長く続けなければいけない一方、みなさんのように最高のビジネス教育を受けることができない人たちです。 Emotional Intelligenceを発揮してください。関係を築いて影響を与え行動を変えさせる力を発揮してください。 アントレプレナーシップを発揮してください。

圧倒的に人不足なGSBでこのインターンシッププログラムを1人でとりまとめているのは、 今年の1月にM社からUNDPに移ってきたDiana。ディレクターという肩書きなのでずいぶん年上かと思っていたら、 おそらくまだ30代前半の若さ。それでいて言葉で人をやる気にさせるパワーとチャームの持ち主。

データを見るのはせいぜい1週間で終わらせるように。机に座って悩まずに、フィールドに出てできるだけ多くの人と話すこと、 それから首都にとどまらずに地方の実態をよく見ること。早い段階で経済開発を担当する大臣か高級官僚に話をきいて、 政策と連携できればなお良いです。政府と現地事務所が良好な関係を築いているので、みなさんが現地の信頼を得ていれば会わせてもらえます。 国内外の企業とも頻繁に話して、現実性のチェックを怠らないこと。ファイナンスやエネルギーをはじめ、 国連の中にもエキスパートがたくさんいるはずなので活用するように。民間の投資を使うので世界銀行とは縁がありませんが、 その他の機関を巻き込みたければ進んでそうすべきです。私は国連に入って日が浅いのであまり助けになれません。 知識と人はイントラネットに載っています。ライトパーソンに行き着いたら、今日知り合った皆さん同士で共有して協力し合うこともとても大事。 各機関もボランティアベースでの手伝いになるので、やはりコミュニケーションに気を配ること。いろんな局面で、 強い問題解決力とMaturityの両方が必要です。350人の応募者から、これだけのことができる人を選んだつもりです。 皆さんを信頼しています。Good luck in your mission.

こんな仕事を学生にやらせるかいな、より先に、元M社の人なら考えそうなことだ、と納得してしまう自分。2-3の当たりが出ればよし、 という考えかもしれないけれど、万一GSBが現地の信頼を失うようなことがあれば、後が大変なはず。身が引き締まる思い。 Dianaが言うような大それたところまでいける自信はまったくないが、 向こうで味わうことになりそうな苦労に近い経験をさんざんしてきた自負はある。夏休みの意義深い使い方として、 かなりいい機会に巡り合えたと思う。

皆の行き先はアフリカ、南米、東南アジア、中国、インドそして東欧。 僕は今学期の授業がまだ残っているのでボストンに戻ってきましたが、NYから直接現地入りするメンバーも数名。秋にまた会おう、 いやSkypeで近々会おう、というか先にちゃんと仕事して教えてくれな、といって送り出してきました。

ぼちぼち期末試験も近づいていますが、、、やはり勉強に身が入りません。。。

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コメント


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「1日1ドル以下で暮らす極貧層」というとちょっと反応しちゃうんだけど,1ドル以下だから貧困→救済しなければ,という図式で決め付けていいのかなあ?
以前テレビでブラジルのアマゾンのどっかの村の話をみたけど,貧困から抜け出すためという名目で,自給自足の村生活から貨幣経済の町生活に関わってしまったせいで,はじめて搾取される貧困層になってしまったとか.だったら自給自足のままの方が幸せだったのではないかと.
貨幣経済に組み込まれていない自給自足の人たちの割合ってどのくらいなんでしょ?

nick | URL | 2006-05-09(Tue)23:17 [編集]


う~ん。
僕も、タンザニアで会った「誇り高い」マサイ族の人たちが、戦士のヤリをみやげ物として売ってるのを見て「むむ?」と思ってしまったので、かってな貨幣経済の押し付けは如何なものか、という視点もうなづける。
Millenium Development Goalでは、途上国開発の目的は「皆がChoiceを持てるようにすること」という言い方をしてます。収入を上げること、が第一義ではなくて、飢餓をなくすこと、病気を減らすこと、基礎教育を行き渡らせること、性差別をなくすこと、等々を含むということのようです。貨幣経済のないところの人達をどうカウントしているのかわからないけど、おそらくこういう(先進国の視点でみた)広い意味での豊かさを享受してない人たち、とみなして開発対象に含めているのでは、と思います。
自給自足できてて飢餓もなければ幸せかもしれないけど、けっきょくマサイの人たちも、子供を学校に行かせることを選んで、学費を作るためにヤリを売り物にしはじめたのだよね。僕は勝手にも、そういう生き方をしてほしくない、とか思ってしまったけれど、、、。うーん。こういう議論をする準備が自分の中でまだできてない。不勉強なり。

konpe | URL | 2006-05-11(Thu)07:49 [編集]


うーん
僕も実際に途上国の開発現場に携わったことがないから,わかんないや...
そういう意味で,経験できるこんぺがうらやましい
いろいろ考えながら経験してくれたことを,いずれ語ってくれ~

| URL | 2006-05-16(Tue)11:51 [編集]


>市場価格の情報がなくて安く買い叩かれているなら、通信インフラの普及が助けになる。
なるほどねー。でもおそらく市場価格がわかったところで流通のルートがなくて特定の支配者層に売らざるを得ない。
生産者層の地位向上が必要なんだろうなぁ。
日本の場合は農地改革は戦後アメリカが勝手にやってくれたけど、この社会的パラダイムを自国の圧力でシフトするのは難しいかもね。
最近インドでもヒンズ教の職業カースト制度から逃れるために仏教の進行が復活しているとか。
ちなみに中国は割り切って先富論とかいっている流れのようです。
難しくて重いフィールドワークのテーマを学生に与えるのね。

らーて | URL | 2006-06-16(Fri)23:53 [編集]


マケドニアだと、農村もさることながら都市部の失業者の貧困が深刻みたいで、また違った視点が必要そうです。
失業してる、基礎教育を受けてない、家族の人数がやたら多い、といった貧困の条件は重なって発生してることが多くて、しかも特定民族でやたら発生比率が高かったりします。中欧は昔も最近も民族関係が複雑・・・。
ところでらーて先生、blogのコメントスパムってなんかいい対処法ないのかしら??

konpe | URL | 2006-06-18(Sun)17:27 [編集]


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