konpe's 夜の仕事記

民間セクター開発、BoP、Clean Tech

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

Building Trust

フルブライトのイベントで、「Enrichment Seminar」なるワークショップに参加するためにシカゴに来ています。 これは、100人超のフルブライターが全米から集まって、 アメリカの社会問題について見識を深めるためにフィールドに出たり討論会をやったりという企画。時折行われているみたいですが、 今回は春休みの予定とうまく合ったので初参加。セミナーを通じて問いかけられるテーマは「Building Trust In Diversity」。

最初はなんともぼやっとしたお題だと思ったものの、なかなかどうしてよく練られた議題。人種差別、国際紛争、教育、医療、 その他もろもろの問題の背後にあるのは違う立場間の「Mistrust(疑い)、Distrust(不信)」だと課題提起して、 どうしてそれが起こるのか、どう対処できるのか考えよう、というもの。

Trustは日本人からすれば当たり前の感覚のようで、アメリカに来てみると実は当たり前でない、と気づくものの1つ。

思い起こせば、先日スキーに行った時。一緒に行った日本人同級生O氏のご子息、元気いっぱいの良太君(8歳)はもっと滑りたい、 おじさん一同はそろそろ休みたい・・・という段になり、「アメリカでは子供を一人で遊ばせた親は逮捕される」 なんて話を聞いて衝撃を受けたものだった。世の中には危険がいっぱい、子供を守るのは親の責任。12歳までは外出時には親同伴が必須、 学校には安全な送迎手段を確保しないとならず、子供だけで外にいるのを見かけたら通報することになっている、とのこと。

そう言われてみれば、子供たちだけで元気に外で遊んでる、なんて姿はアメリカの街ではまったく見ない。社会不信もここまで来ていたか。 日本も最近は物騒とはいえ、さすがに親を逮捕までしなくても・・・という感覚は、アメリカ人からすると「遅れてる」のだそうだ。 独り者としては考えたこともない視点、しかしそんな社会も如何なものか、と思っていたところだったので、いいタイミングでのお題だった。

ワークショップ初日は、医療における医師と患者の間のTrust、というレクチャーからはじまった。 講演者は精神科の臨床医をやりながら、ミシガン大学でGender studiesを教える教授。

人種差別や性差別は制度的には周到に対策がなされ、逆差別が問題にされたりする一方で、深く根を下ろしてしまった差別側の偏見、 積もり積もった被差別側の苦しみは至る所で姿を現す。その例のひとつが、医療の現場での医師・患者間の不信だそうだ。黒人の患者は社会全般・ 権威に強い不信を抱いている場合があり、そうした患者は白人医師を信頼しない。さもありなん。また、 精神科では黒人が精神分裂病と診断される頻度が白人の5~7倍もあるが、相当数の誤診が起きているのだとか。感情が不安定で暴力的になる、 といった現象が精神病によるものか、社会的な背景によるものか慎重な判断がいるのに、医師側の偏見・ 配慮不足のために短絡的に精神病と診断してしまう。云々。・・・こういうイントロをされると、「Trust」 というテーマのむずかしさがなんとなく伝わってくる。

2日目はグループに分かれて、シカゴのPublic School(州立学校)の見学。

私立の学校と違って、お金のない層の生徒が多い。僕らのグループが見学したSenn High Schoolでは、8割の生徒が 「低所得者層(福祉の対象)」と分類される。黒人、ヒスパニック系がそれぞれ4割。家族で移民してきたばかりで英語がよく話せない、 という子も多い。毎年2割がドロップアウト、卒業する生徒が6割強、それでもPublic Schoolの中では優秀とされている学校とのことだった。

サイズ変更IMGP0232

校舎の入り口には、空港と同じセキュリティチェック!! 学校で発砲事件、なんて海外ニュースが急に生々しく感じられる。

サイズ変更IMGP0234

授業にお邪魔し、各自の出身国を紹介。写真でしゃべっているのはアフガニスタン人。タリバン、アルカイダ、イスラムについて、 国の将来について・・・。さすがに生徒の食い付きが違います。

アメリカ人のフルブライターも1人参加していて、高校生たちにフルブライトの理念、奨学金制度を説明。みんなも大学で勉強して、 ぜひ留学にも挑戦してほしい、と訴える。「皆も知っているとおり、アメリカは今、世界中から悪く見られています。今こそ、 政府の人や軍の人じゃなく、私やあなたたちのような普通の人が世界に出て行って、アメリカの姿を正しく話すことが大事」・・・ 外国人としては、おっ、と思ってしまうような説明の仕方。でも先生もうなづいている。

* * *

ワークショップ会場のホテルに戻り、他の学校に行った組も交えてさっそく議論が始まる。

「僕の知っている学校とは違う。あれは刑務所だ」

セキュリティチェックはどこの学校にもあったようで、

「生徒を信頼しない学校で、どうして人を信頼することを教えられるのか」

まったく正しいと思う。毎日、不信にさらされ続けることがトラウマとして残る生徒もいるという。僕が話した生徒の中には、 授業中いっさい顔を上げず、まったく人と目をあわせようとしない子もいた。一方で、生徒が発砲、同級生と先生数十人が死傷・・・ なんて事件が起き、家に帰れば銃があるような街。どうしたら今の学校と生徒の関係を変えられるのか?

教育政策を専門にしているベトナム人とずいぶん話をした。初等教育は家庭から始まり、家庭と学校が連携するのがあるべき姿。 学校での教育をサポートする、地域社会における信頼感と協力関係(Social Capitalと呼ぶらしい)をいかに築くか、 というのが彼のテーマ。PTA、授業参観、家庭訪問、、、日本で当たり前だと思っていたことが、 世界ではまったく当たり前ではないようだった。日本の学校システムを絶賛する彼。しかしこの国で、 白人教師が黒人スラムを家庭訪問できるような日が来るのだろうか?

こんなアメリカを見て、普段見ているMITのような環境はつくづく人工的だと思い知らされる。ワークショップはまだまだ続く。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。