konpe's 夜の仕事記

民間セクター開発、BoP、Clean Tech

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ワインと開発と社会の学び(1)

グローバリゼーションの授業(サマーズ)とクラスターの授業(ポーター)、異文化リーダーシップに負けず劣らず面白い。 なんでおなじ経済学でも、先学期のスローンの授業(Industrial Economics:ピンダイク)より格段にのめり込むのか、 と考えていて、いくつか気が付いた。Ind Econの主眼は企業がいかにマーケットパワーを行使し、 なるべく多くの価値をキャプチャーするか、というもの(価格差別化して消費者余剰をしぼりとれ! とか)。 それはそれで戦略論の基礎の重要なところではあるけれど、 自分はやっぱり取り分を増やすことより全体のパイを増やすことに知恵を使いたいのだった。 マクロに分業特化を進めて死荷重を減らすグローバリゼーションにしろ、 ミクロに競争を通じて技術革新による溢出効果と組織間学習を加速するクラスター形成にしろ、目的は価値創出にある。

加えて、Ind Econは現実課題のなかでミクロ経済で補足できる部分を拡大しようとしていた意気込みはよかったのだけれど、 決定論的かつ経済に閉じていた。一方グローバリゼーションについては市場統合、国家主権、地球公共財という連立不可能な三要素 (impossible trinity)、またクラスターについては政府、企業、研究機関等が果たすべき役割、という、 どのセクターで仕事をする人にとっても一般解のない問いが最後まで残る。学問的には、前者については国際関係と政治経済、 後者については社会学、組織論といった分野横断的な探求の余地が開かれているし、 実務的にも個別事情に応じてそんな問いに自分なりの視点を示すには、文化適応や価値観の変容、 一段高い目的に向けて境界を超える集合的アクション、という自分の興味に訴えるところが強い。 こういう視点で最初から3年間勉強できていたらどんなに効率がよかったことか、と思うものの、試行錯誤してようやく見出したものだから、 まあしょうがないのでしょうね。

さて、先週のポーターの授業は、カリフォルニアのワインクラスターの話と、コスタリカのインテル誘致の話。 じつはどちらも自分にとっては、マケドニアで仕事をしていたときに読み込んでいて馴染みのあるケース。 思えば上記のような課題意識すべての出発点を与えてくれたのはマケドニア体験だった。思い返しながら、 今同じ仕事をするとしたらどうするだろうか、ということを考えていた。

当時のプレゼン資料なんかを見返してみる。目的が「貧困削減のための事業開発」だったので、貧困層ってだれのこと?  というマーケティングから検討は始まる。

poverty

この国で貧困といえばまずロマ人、それから田舎の農民、都市部の失業者、という3グループだった。 人口200万人のマケドニアで貧困ライン以下の人口は68万人、うちロマが5万人、農民が38万人、都市部が27万人。 ロマの貧困は絶対数は少ないがロマ人口に占める貧困比率が高く、地域共通の課題でもあり、 これの改善がEU加盟条件にもなっているので避けては通れない。

3グループそれぞれについて事業案をひねる。ロマ人向けにはプラスチックのリサイクル事業、 農村ではワイン産業ほかagribusiness、都市部および国全体について、長期的視野での教育におけるIT普及($100 Laptop)というのを考えていた。マケドニアおよびセルビアのロマ人のスラムに潜入してリサイクルの提携先アントレプレナーを探したり、 田舎巡りをしてインタビュー相手の葡萄栽培農家を探したりしたのが懐かしい。

mk wine global

気候や土地の条件のよいマケドニアは、ワインの産地としては悪くない。じつは7000年前から、 フランスよりずっと先にワイン作りが行われていたりする。今でも世界の輸出市場の1%近くを占めている (人口200万人の国でこの比率というのは信じられないくらい高い)。が、価格ベースのシェアで見るとわかるとおり、 作ってるのは安物ばかりで外貨獲得のインパクトは僅少。

mk wine price

マケドニア産のワインはほとんどが、バルク(樽)のまま近くの国(スロベニアなど)に運ばれ、そこで熟成、 瓶詰めされて再輸出されている。過去15年間、他のワイン輸出国のほとんどは自国内での最終加工とブランディングに努め、 輸出価格を上げてきたのに、マケドニアでは自国ブランドの瓶詰めワインはごく一部で伸び悩んだまま。

mk wine grape

ブドウ栽培農家に突撃インタビューしてみると、原料の買取価格決定にしても支払いスケジュールにしても、 いかにワイナリーが農民を搾取しているかがよくわかる。最終製品の価格を上げられれば、 ブドウの買い取り価格も上がって農家の暮らし向きがよくなるのは、他国の例を見れば明らかだ。

mk wine chain

業界は、葡萄栽培から自社でやって付加価値向上に努める一部の上流統合型ワイナリーと、 旧態依然とした大手ワイナリーにくっきり分かれている。貧困削減プロジェクトとしては、 農家から買い叩いてバルクばかり作っている大手に付加価値戦略への転換を迫りたいのだが・・・。

mk wine issue

問題山積。下流のブランディング(5)はほとんど国際品評会とかメディア露出で決まり、 まとまったマーケティング費用投入がどうしても必要。オンラインで買ったHBSのケースには、カリフォルニアやオーストラリア、 チリなど新興勢力の業界挙げてのマーケティング努力が実を結んでいるさまが書かれている。そういうcollective actionを媒介する輸出促進団体のinstitutional capacityが肝だ、と容易に想像がつく。 形のうえではマケドニアにもそういうワイン生産者団体はあるが、話しに行ってみると、どうも大手が結託した利益団体にすぎない。彼らは、 市場開放すると輸入品に国内マーケットを取られるので、輸出拡大よりは保護政策維持にインセンティブがあるのだ。

高付加価値化、輸出拡大をしたい小規模ワイナリー(4)は、自分たちだけで小さな団体をつくって細々と頑張っている。 こういうのはだいたい、海外でMBAをとって国内産業復興に汗を流している若手起業家。話しに行ってみると、 ブランディング以前に生産増に悩んでいる。なんでも銀行が国内瓶詰めワインの生産設備にお金を貸してくれないのだとか。銀行からみれば、 ワイン業といえば大手がやっているような1年サイクルでバルクを輸出する商売。 資金サイクルが3-5年で価格リスクも高い国内瓶詰めモデルが分かる、ファイナンスの言葉が通じるバンカーがそもそもいない。 更にはナパバレーなんかがやってるように、メディアや品評会に頼らずワイナリーにリードカスタマーを招いて体験を売り、口コミ拡大する方法 (ワインツーリズム)ももちろんやりたいのだが、葡萄畑の真ん中に道路を敷いて宿泊施設をつくって、 という初期投資は小規模ワイナリーでは到底まかなえない。「そういう公共財は大手か政府が作ってくれないと・・・」、うむー。

大手(3)は国営企業からついこないだ民営化されたような生産性もコスト競争力も低い組織で、インタビューにさえ応じない。 汚職で政府とつながっている、みたいな話もちらほら。また、品質が伴わないとブランディングのしようもないが、 上流の農場運営(1)(2)はというと、ワイン輸出を伸ばしている国がみんなやっている大規模化・合理化どころか灌漑設備すらままならない。 ワイン農園は15年くらいで土を入れ替えてリノベーションするのだが、 大手ワイナリーが金を出していたその手の投資も民営化以降は行き渡らなくなってきている。 輸出拡大以前にこのままでは産業存続が危ういのでは・・・といった具合に、八方塞がりに見えてしまうのだった。 マクロで伸び悩んでる国ってミクロではこういうことになってるのか、と肌身にしみて分かる仕事だった。 日本で弱音を吐いてる産業をいくつも見たが、ここまで悪条件揃いじゃあない。

*  *  *

ここまでの診断で、10週間の滞在期間のうち半分くらいは過ぎている。課題をあげつらうことくらい、 M社で修行したら誰でもできるけど、難しくて価値があるのは一発逆転の打ち手作りだ。ここから成功の絵が描けるとしたら、 何が起きないといけないか? 答えの重要な部品は現場に埋もれていることが多いので、仕事ではひたすらコンタクトを広げ続けたりしていたが、 マケドニアのワインは俯瞰した限り、ここをもっと掘れば宝が出そう、という感覚がまったくない。 ひとりプロジェクトでブレスト相手もいないから、座ってじーっと考える。

現象の背後の構造課題はみんな相互につながっていて、ここを突けば悪循環のサイクルが好循環に転換する、 みたいなレバレッジポイントが必ずある(と信じるしかない)。$100 Laptopについては政府が出していたIT国家戦略に乗っけられる素地があったし、ロマ人にはリーダー同士の国際ネットワークがあり、 彼らはプラスチックリサイクルビジネスにはかなり乗り気。そういう、求心力のある旗振り役なり業界リーダーが正しいボタンを押す、 という構図にならないとワインも厳しい。小規模統合ワイナリーをやってるアントレプレナーはまだちと弱いし、 ダークな匂いの大手に動いてもらうのも長期戦の覚悟がいる。うむむー。

困ったあげく、悪条件から飛躍的に経済成長を果たした途上国の例をいろいろ調べてみると、 転換点にはかならず外資の大規模投資案件があることがわかる。コスタリカ(インテル)、ボツワナ(デビアス)、モザンビーク(モザル) といった具合。折りしも、ワイン以外の農業関連事業もリサイクルも、技術と販路の確保のためには大手パートナーが必要そう、 と分かってきていたので、海外に目を向けていろんなコネを辿り始める。が、 投資環境の変化なり新情報もなしにそう簡単に投資したい人が見付かる訳もなく・・・。最終報告では、目処がついてきた$100 Laptopを主軸にリサイクルを従につけ、ワインは優先度を下げる。後に続く検討推進のオーナー探しもおぼつかず。時間切れだ。無念。

*  *  *

ポーターのクラスター授業では、先週(カリフォルニアワイン、コスタリカのインテル)から今週(コロンビアのプラスチック産業、 スイスの精密機械)にかけて、企業・政府に加えて「institutions for collaboration」 なる存在にフォーカスが移る。これは業界団体だったり研究機関だったり投資促進のための政府機関だったりNPOだったり、機能・ 形態はまちまちだが、セクターを越えた協業を仲介してクラスター形成の触媒的役割を果たす組織のこと。

マケドニアで最後に言い残してきたのも、それに相当する組織能力開発の必要性についてだった。 折りしもUNDPの中でのGSBの位置づけについて、迷いと懐疑心とが入り混じっていたところ。 GSBというのは僕の雇い主だったUNDP内部の民間協業イニシアティブで、社内ベンチャーみたいなもの。昔の記事に書いたとおり、 母体組織のミッションとは相容れないという見方も強い。マケドニア事務所でも「民間協業・事業開発なんて国連がやるべきことか?」 との議論が繰り返される。一方、いったん外の機会に目を向ければ、国連がやるにしろ他のだれかがやるにしろ、セクター間協業の仲介者、 くわえて海外市場や国際資本と個別国内事情の橋渡しをする機能が空白地帯になっているのは明らかだった。

国際企業(MNC:Multinational corporation)からみれば、 バルカン半島はEUとロシアの中間に位置する地政学的に重要なポイント。とはいえマケドニアにしろボスニアにしろ、 旧ユーゴが分断された各国は、ひとつひとつを見てもしょうがないくらい小さい。例えばセルビアは戦略的にEU加盟を目指さず、 ロシアとFTAを結んでいたり、個別事情もまちまち。一方、農業条件にしろロマの越境ネットワークにしろ、地域単位の共通条件も多い。 各国に散在する投資機会を地域単位で束ねて交渉テーブルに載せられるような機能は、 非連続的な経済成長のトリガーになるような投資誘致には必須に見えた。一方、ワインで見たようなデッドロック (バリューチェーンの上流から下流まで課題山積で各々が鶏と卵の関係)は多かれ少なかれどの業界にも共通するパターンで、 政府なりNGOなりが上流・中流の各々の課題に打ち手を講じようとはしているものの、負のサイクルを断ち切るのはやっぱり最下流の需要増。 市場経済下ではお金の匂いがするほうに皆勝手に流れるのだから。

mk gsb

ターゲット(貧困)は最上流でもレバレッジポイントは最下流。各機関の勢力図は国によって若干違うものの、 最下流を地域横串できるプレイヤーはUNDPをおいて他にいない、という理屈だった。もちろん言うは易し・・で、 そんな動きができるために打破しないといけない組織課題も山積み。縦よこナナメに色んなところと話しに行ったもの。この一連の検討が、 国際開発・貧困削減への興味、グローバリゼーションとリージョナリゼーションという文脈、IFCという機関への関心 (と次の夏のインターンシップ)、巡り巡って境界を越えるリーダーシップという主題に至るのだった。

さて、そんな振り返りと未解決の課題認識をもって臨んだポーター授業から見えてきたものは? ・・・前置きが長くなったので、 続きはまた次回。

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