konpe's 夜の仕事記

民間セクター開発、BoP、Clean Tech

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今学期のお品書き

最終学期。出だしからフル回転で各授業が立ち上がり、着地点がなんとなくではあるが見えてきた。 2年半の学びを立体的かつ分野横断的に統合しつつ、自分の今後にどう活かすか、時間をかけて考える半年間になる予感。

この2年半を棚卸しすると、学んできたことはざっくり3つのキークエスチョンに集約されることに気が付く。

(1)世界はどう動いているか・・・マクロ経済、国際金融・貿易、国際政治、途上国開発、気候変動・エネルギー、安全保障、等々。 これに貢献したのは主にケネディスクールの授業と、 国連と世銀/IFCでのインターン旅行および、 志が高く経験豊富な同僚・友人達による思想的影響。

「世界がどう動いてきたか」「どう理解すべきか」について理論と語彙を注入され、 いろんな生々しい事例や自分の取り組みをつうじて理想と現実の乖離を体感し、複雑かつ相互依存な世界観が形作られてはきたものの、 「これからどう動いていきそうか」「自分がどう関わっていきたいか」を明快に考えるにはまだまだ力が及ばず。

(2)イノベーションはどう起こせるか・・・産業組織論、科学技術政策、戦略・イノベーションマネジメント、システムダイナミクス、 ファイナンス、他MBA基礎科目。おもにスローンの授業と一部ケネディ、 授業から派生したいくつかのコンサルティングプロジェクト、メディアラボでのプロジェクトから派生した研究活動、教授陣による影響。

個別企業の製品市場戦略、技術に基づく新事業開発、という、仕事を通じてお馴染みだった世界観が押し広げられ、 いろんな問題意識に発展。個別企業の意思決定を超えた諸々の構造要因がどう作用するか。産業単位での興亡のメカニズムは何か。 産官学のインタラクションをつうじて誰がどんな目標に基づきどう振舞うのか。結果、(1)に起因する機会がどう捕捉され、 脅威がどう増幅されるのか・・等々。それなりに自分の職業生活を通じた関わり方のオプションが見える段階には来ている。

(3)個人はどう集団・組織・社会を進歩させうるか・・・分野の名前に落とせば組織行動論、社会学、社会・集団心理、認知、発達心理、 云々を束ねたリーダーシップ論と組織学習理論、ということになろうが、ほぼ固有名詞でボストン近辺の特定の教授陣からの影響。ロナルド・ ハイフェッツ(KSG)、ピーター・センゲ、エドガー・シャイン、デボラ・アンコナ(Sloan)、クリス・アージリス(HBS)、 ロバート・キーガン(Harvard教育大学院)、リチャード・ハックマン(Harvard心理学科)、他。

知識の吸収とは違う形態の学びを知り、学びの過程を共有した仲間とは強いつながりができ、学ぶ側から人の学びを助ける側にまわり (TA、STeLA)、MITの修論で一旦はまとまった形になった。 そういえば、修論よりいくぶん前の内容ではあるが、関係者一同の論文がIPSJイノベーション特集号に採録されたりもした。 修論で描いた一般論を(1)や(2)の文脈に位置づけなおして具体化すること、 今後の職業生活をつうじてどんな時間軸でどう発展させうるか明確にすること、が目下の課題。

さて、これを踏まえて今期の授業は、3つの学びを統合しつつ深める以下の品揃え。

(1) Contents of Globalization: Issues, Actors and Decisions (syllabus)

タイトルの通り、グローバリゼーションに絡む諸々の課題の背景理解に加え、主要アクターの利害の把握、 意思決定シュミレーションまで半年でカバーしようという、きわめて野心的かつ目線の高い授業。ケネディスクールと経済学部の共同開講。 教えるのはローレンス・サマーズ教授(クリントン政権時の財務長官・元ハーバード学長)、プリシェット・ラント教授(世銀出身、 ケネディスクールで国際開発を教えながらグーグル財団等を手伝う実務家)のコンビ。サマーズがいわくつきで学長を辞め (させられ)たお陰で今年から新設された授業。

今のところ、読み物・講義を通じて上記(1)関連の各授業でしみこんだ基礎が頭の中で順次つながってゆく、なんとも心地よい授業。 ケネディでとった5つ位の関連授業のこれ1つでも欠けていたら今のコメントは理解不能だった、と思われる箇所が頻繁にあったりする。思えば、 高校では日本史も世界史もやらず、大学で経済のけの字も知らなかった自分にとって、 今回の学生生活は広い世界に対する無知を多少なりとも挽回する最後の機会。挽回できたものだろうか、と思いながら1週間目 (ほぼ19世紀以降の世界史)を受けてみると、むしろこれまで下手に勉強していなくてよかった、と開き直れるくらいに背景知識が効いてくる。 開放マクロ、国際関係、貿易経済等々知らずに高校世界史をやっていても、肝心のところがなんにも分からなかったのではないか・・・ なぜ戦争が起きなければならなかったか、なぜ恐慌に対処できなかったか、経済体制と政治思想と社会政策と軍事の絡み、 戦後の世界運営の枠組みの成功要因と限界、各国の重大政策決定とその帰結、、等々。基礎もきちんと体系立てて学んではいないので、 折に触れて前提を所与として飲み込むしかない場面もあるが、必要に応じて立ち戻る素地はたぶんできてくるのだろう。 歴史をやっているうちは遠い世界の出来事に見えるが、この先もっと今日的な課題を掘り下げ、 民間含めた各アクターの絡み合いが面白くなってくるのが楽しみ。

(2) Microeconomics of Competitiveness: Firms, Clusters, and Economic Development (course prospectus)

企業、政府、大学その他の機関が協働し、健全な競争環境の創出・維持、貿易・投資の促進、継続的なイノベーションを通じて、 いかに国や地域の経済が発展していくかを、先進国と途上国、農業から携帯電話に至るまで各種ケースを通じて解き明かしていく。 ケネディスクールとHBSの共同開講。教えるのは競争戦略の大ボス、マイケル・ポーター教授。 企業レベルの戦略から国レベルの競争力向上に軸足を移し、 途上国の経済発展や競争メカニズムを通じた各種社会問題の解決に関心を広げているポーター教授が現在唯一教えている授業。 prospectusにあるとおり、コース内容をパッケージ化して世界に布教活動(50ヶ国80校近く)をしていて、 ハーバードでの授業は録画されて他国向け教材に使われたりもする。 それなりに学生が殺到するので履歴書と志望動機の審査で受講生を選ぶことになっており、日本人枠は例年KSGの経産省の人が占めるのだが、 今年はなぜか開発関係の馴染みの面々。

本の中では「戦略の敵はdistractionとcompromiseである!」と喝破し、アメフト・野球で州代表に、 ゴルフで全米代表になった経験まである超体育会系のポーター御大。さすがに初回からびゅんびゅん飛ばす (隣の席のこっちゃんが概要をうまいこと書いてくれてます) 。彼が世界中の事例を研究し尽くした成果のクラスター理論はなかなか味わい深く、 本流のミクロ経済に根ざしたcounterintuitiveもちらほら(大事なのはfactor endowmentでなくfactor creation & upgrading、とか、構造的弱みを強みに転換するselective factor disadvantageとか)。

いまのところ、「うまくいっている事例を事後的に説明するとどうなるか」みたいなdescriptive theoryの導入にとどまっている感はある。また、国が独立してすぐに開放政策をとりました、 というところからケースが始まっていたりもする (短期的な痛みに耐えて長期的な成長につながる選択がいつでも政治的に可能だったら苦労はない)。(1) でやっている南米や東欧の文脈が絶妙にケースの補足説明になっていたりして楽しいものの、HBSでは 「ケースに書いてない情報は持ち出さない」鉄則があって踏み込めなかったり、若干の残尿感はある。御大と話しに行ったら、体育会系らしく 「これとこれを勝手に勉強すべし」と返り討ちに遭ってしまった。さすがに建設的・前向き議論のプロを感じさせる。 ちゃんと勉強して再戦の見込み。

(3) Leadership: A Cross-cultural and International Perspective (syllabus)

ハイフェッツの適応的リーダーシップ論(邦訳は好評増版中) を一歩進めて、文化固有の価値観・ アイデンティティに根ざした行動様式を変えないといけない局面でのリーダーシップについてみんなで思索する。教えているディーン・ ウィリアムズ教授は去年まで2年間、世銀プロジェクトでマダガスカルの大統領のアドバイザーをやっており、 このたび帰ってきたお陰で今年から再開された授業。なかなか風変わりなバックグラウンドの持ち主で、 25年前にハイフェッツがKSGでリーダーシップを教え始めた時に博士の学生として彼に教わり、 日本で松下政経塾に入門して幸之助に教わりながら博士論文をかき、 KSGではハイフェッツと入れ替わり立ち代りでリーダーシップを教えながら、 ボルネオの原住民と一緒に暮らして部族の長にリーダーシップ指導をしたり、東チモールの再建アドバイザーをやったりもしている。 グローバリゼーションに引っ張られて文化適応を求められる国々でのリーダーシップ、というのが目下の関心で、マダガスカルでの経験をもとに 「貧困撲滅に向けたリーダーシップ」という本をこれから書くのだという。そうそう、僕もそういうの考えたかったんです、ということで、 先学期の濃厚体験に凝りもせず、またTA(授業助手)をやることに。相方TAのTamasは国連出身のミッドキャリアで、 これまた面白い経験と文化的な紆余曲折体験の持ち主のようなので仲良くなるのが楽しみ。また、TAをやる授業は履修できず、 単位が足りなくなってしまうので、別途この教授と自主研究をやってペーパーを書く予定。

読み物のひとつ、Culture Matters(「文明の衝突」のハンチントンが最近まとめた本)がなかなか良書。 「経済発展を促すためには文化を修正する介入が必要なのか?」という、重大な論点を投げかける。 開発経済だけではいつまでたっても解決できない貧困問題を政治学やら社会学やら文化人類学やらの視点からよりよく理解しようという取り組みはずいぶん前からあるが、 この文化はあの文化より優れているから成功した、みたいな主張はいかにも文化帝国主義に通じるとみなされて長くタブーだった。 先進国が途上国の文化を変えようとするなどもってのほか。ところがこの本では、もうこの問いを避け続けるわけにはいかない、 とばかりに各分野の重鎮が論陣を張り、マイケル・ ポーター御大までお出ましになってクラスター発展に必要と思われる文化的素地について書いていたりもする(2章)。 考えてみれば日本も明治の開国で大きな文化適応を経験しているし、今もまた挑戦の時なのかもしれない。 たとえば国民の半数がHIV/AIDS感染者みたいなアフリカの国で、薬や避妊策の普及より根深い文化的要因(女性の権利、一夫多妻、云々) を尊重すべきなのか? 否応なしに経済統合が進む中での文化適合をどう捉えるか?  成長機会を捉えるために既存の文化が障害になるのだとしたら?

ウィリアムズ教授はマダガスカルに赴く際、昔TAをやった卒業生にも来てもらい、 国中の部族の長を7,500人集めてKSGのリーダーシップ授業さながらの対話を繰り返しながら文化適応を進めていった。 ポーター教授のクラスター理論によく出てくるような投資誘致機関をつくり、 市場原理への転換を図ろうとした際には世銀が一大抵抗勢力だったという。皆を困難な現実に向き合わせ、価値観の衝突を表面化させ、 苦痛を皆が耐えうるレベルに調節し、学びを喚起して前進をもたらすのがリーダーシップ。アフリカの例は遠く感じるにしても、 機能不全と分かりながら変われなくて沈没していくのは国も企業も同じだし、 変化を起こそうとする人が引き摺り下ろされる危険を冒さねばならないのも同じだ。イノベーション、経済発展、 文化適応を経ながらも生き残るリーダーシップの実践に即した要諦は何か? 組織や社会にそうした適応能力を染み渡らせる具体的方策は、 文化的背景によってどう異なるのか? このあたりの問いが、一般論かつ現実問題と遮断した課題設定をしていた修論の延長上にある。 マダガスカルの振り返り診断をどう深めるか、タイとかシンガポールみたいな奇異な事例も見てみるか、コスタリカとインテルのように、 政府と民間がうまく合致して飛躍した例から企業への意味合いをひねってみるか・・・自主研究のアプローチをいまのところ絞り込み中。

*  *  *

首尾よく進めば、3つのキークエスチョンがうまく焦点を結ぶはず。半年でどこまでいくか。また、3つでおなか一杯の感はあるが、 ケネディスクールの卒業要件にはまだ1科目分足りていない。学期後半からはじまる半期の授業を2つ、こちらはやや拡散気味で取るつもり。 ますます前半のスタートダッシュが大事。と言いつつも、卒業前にもっともっと人とつながらねばならない。 この週末はMPAの皆でスキー旅行だったりもする。ああ、1日40時間くらいあったなら・・・。

相変わらずなようにも見えますが、混乱真っ只中というよりは、徐々に着地点を見定めつつ勉強してます。そろそろ卒業も楽しみです。

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コメント


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久しぶりです.東工大のシゲです.
konpeさんのブログいつも拝見しています.個人的にkonpeさんがボストンで学んだことについてじっくりお話させていただく機会が是非欲しいと思っています.日本に帰る機会は直近でありますか?なければ,こちらばボストンに行く時期(夏および冬)に是非,さしでお聞きしたいくらいです.

シゲ | URL | 2008-02-10(Sun)02:28 [編集]


ごぶさたしてます! 夏にボストンにいらっしゃる折にはぜひご連絡ください。

konpe | URL | 2008-02-11(Mon)14:26 [編集]


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