konpe's 夜の仕事記

民間セクター開発、BoP、Clean Tech

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世界の課題と日本の経験

もう1ヶ月くらい前、ひさびさにワシントンDCの世銀にお邪魔した。用件はいまホットな開発課題についてのカンファレンス。 今更思い出して書いているのは、その内容(開発課題と日本の貢献)、先週のボストン日本人研究者交流会(半導体産業のオペレーション改善)、 今日出た別の会合(日本のグローバル・ヘルスへの関わり方)がみんな、微妙につながって、 最近の関心分野の輪郭があらためて浮かび上がってくる感覚をもったから。

■開発課題と日本の知識経済

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これは日本/世銀共同大学院奨学金プログラム(JJ/WBGSP)の参加者が招かれ、世銀のエコノミスト、大学の先生、 日本政府の開発関係の方など寄ってたかって、1日の講義と討議で今ホットな開発課題、世銀の仕事、日本の貢献について一通りカバーしよう、 という野心的な会合。トピックはMDG達成状況(統計データで分かること、データの裏のホントのところ)、ガバナンス (政府の汚職と経済発展の関係)、通貨危機と開発、などなど(議事次第とともにプレゼン資料も全部公開されているので、 その筋の方はのぞいてみると面白いかもしれない)。

JJ/WGBSPは開発人材の育成のために日本政府が資金拠出している奨学金で、その趣旨の寛容さ、規模と歴史、 測りにくい成果がちゃんと測れるかたちで出ているさま(大臣輩出数など)、どれをとっても他に例のない優れた奨学金プログラム。 若干名の日本人枠を除いては途上国出身者が主で、受給者には返済義務も特定の職業につく義務もない。その代わりというか何というか、 受給者には日本政府が国際開発に果たしている役目をちゃんと理解してもらって、感謝してもらって、 出身国で要職に就いたあかつきには是非コラボしましょうね、という、えらく控え目・日本的な趣旨で、 今回のような機会をつくっては日本の開発政策のプロモーションをしている。

そういう文脈での今回のカンファレンスのメインテーマは知識経済に向かう日本。 これは日本の経験から途上国に適応可能な教訓を引き出す目的で、途上国としての日本が経験した戦後復興の過程、産業育成における政府の役割、 競争力の源泉としての科学技術、ナショナル・イノベーション・システム、教育システムとか労働慣行といったお題で、日本の先生方 (竹内弘高さん、野中郁次郎さん等)が筆を振るって世銀がまとめたレポートに基づいている。自動車・ 家電を中心に輸出主導の成長がいかに達成されたか、みたいなお馴染みの分析から、 敢えて最近の日本が直面しているチャレンジにも踏み込んでいる。主要な日本の半導体メーカーがいかに集中と選択を欠き、 海外新興勢の追随を許してしまったか、とか。生産拠点は海外に移しつつも、 いかに国内で高付加価値の知識創造型に移行していかないといけないか、とか。

日本のハイテク・自動車産業の経験、科学技術政策や研究開発資産が途上国での産業育成にどう活きるのか、というトピックは、 自分にとってはもともとの得意分野と新たな興味分野の交差点ともいえる。日本の産業の今の課題と、 アフリカをはじめ途上国の現状とを見比べるとギャップが大きい感はあるが、結局のところ経済発展がないと貧困の解消もない。 下の図でいうところの土台にあたるところも確かに大事だけど、頂上に成長のエンジンが作れなければ、土台を支える人材も資本もおぼつかない。

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議論の間、インテルの半導体製造工場の誘致を皮切りに、電力や輸送のインフラ整備、 国内教育水準の刷新とハイテククラスター形成まで一気通貫でやったコスタリカの事例を思い出していた。 先進国側民間の工程再配置と途上国側・国をあげての開発努力がマッチした好例。日本は東南アジアを中心にさんざん工場を出してきたが、 途上国側でコスタリカみたいな産官挙げての努力を喚起してこれたかどうか。 ハイフェッツ授業で開発プロジェクトの失敗例が出るたびに教授が口をすっぱくして言うような、managing holding environment、ripen the issue、give the work back to peopleみたいなアプローチは、へんに軍事的外交目的を混ぜない日本政府の開発援助姿勢、 現地化がとくいな日本企業の海外展開姿勢にこそ合っていると思うのだけれど。

■ボストン日本人研究者交流会

毎月恒例の学際発表会。今回はSloanの後輩にしてM社の同僚のK氏による発表で、M社ハイテク関係諸氏にはおなじみ、 半導体生産現場の脱リーンを語る「ダイエットをやめるとき」。これはこれで、 即効力のある打ち手としてとても面白いのだが、日本の半導体産業はこれからどうしてゆくのかなあ、ということばかり考えていた。

コンサルタントとしてはクライアントさんの顔(とかその2歳の娘さんの写真とか)が頭に浮かんで、 いかに外資PEなんかに買われずに生き残るか、という視点にたってしまうけれど、長い目で見て本当にそれが正しいかどうか。 会場の某半導体装置メーカーの方からは、東芝とエルピーダが生き残ってあとは買われると思う、みたいな指摘も出たり。 こないだのEconomistに「日本型のハイブリッド資本主義をめざして」みたいな記事が出ましたが、 これに書かれているみたいな社会と企業の新しい関わり方をみんなで模索している最中なんでしょうね。

さらには途上国側の開発という邪念が混じっている僕は、従来の輸出主導の成長から(これみたいに) 直接投資と広域産業クラスターの形成を通じた成長へ、という視点でまたインテルとコスタリカとかを思い出してしまう。

■グローバルヘルスと日本の外交政策

ハーバードの一角で行われた、武見敬三氏(前参議院議員)とアマルティア・セン教授その他によるパネル討議。お題は、 日本が洞爺湖サミットで打ち出そうとしている感染症対策、これまた日本の経験を活かした貢献策について。

ケネディスクールではよく「リボルビング・ドア」という言葉が使われる。 これは政府の要職と大学の教職を行ったり来たりするキャリアパスをさしていて、とくにリベラル色の強いケネディスクールでは、 共和党政権になると政府から抜けた民主党系の人がたくさん来て、突然人材が充実したりする。 ハーバード全体では日米関係プログラムというところが日本向けにこれと似た機能を果たしていて、先の参議院選以来、 自民党の議席を外れてリサーチフェローとしてハーバードにやってくる人がちらほら。武見さんもその1人で、 「選挙のおかげでKeizoをはじめグレイトな人達に来てもらえて、日本の選挙民には感謝しないとね」 なんてセンシテブなジョークがチェア役の教授から飛び出したり。

さて、日本は2000年の九州・沖縄サミットで3大感染症(AIDS/マラリア/結核)対策を打ち出して以来、 来年の洞爺湖サミットでも引き続きヘルスケア分野での貢献を前面に出す考え。 省エネや環境技術で先行する日本が気候変動や環境問題を主導したいのと同様に、平均余命が世界一、 戦後めざましく公衆衛生を発展させた日本はグローバルヘルスでも世界のリーダーになれるはず、という視点。 環境問題ほど国際社会でアジェンダに大きく取り上げられていないヘルスケア分野をいかに「政治化」してモメンタムをつくっていくか、 という議論が主だった。国際関係と医療政策が専門の武見さんには思い入れの強いトピックなのだと思う。

パネルの相方のアマルティア・ セン教授は、貧困のメカニズムをミクロ経済的に説明してノーベル経済学賞をとり、「人間の安全保障」を唱える大ベテランの学者さん。 遅刻して会場に着き、猫背でなんだかおぼつかない足取りで席に着くのをみながらちょっと心配になったけど、 いったんマイクを握るとその洞察の深さと論旨の鋭さはさすが。アジア数千年の歴史を振り返って、 中国の医療技術とインドの公衆衛生システムの発展の経緯にふれながら、 今日の民主主義と市場経済のしくみの中で公衆衛生をどう位置づけないといけないか、持論を述べていた(と思う)。

日本の経験を世界の開発に活かす、という文脈で、古くは産業政策、今は環境とか知識経済への移行が話題に上るのはよく目にするが、 公衆衛生もたしかにあるなあ、不勉強だった、と思わされる。新薬開発とか医療技術というより、 地域社会資本の築き方とか母子手帳の仕組みなんかが非常に優れてるとのこと。HSPH(ハーバード公衆衛生大学院) でここ数年日本をプロモーションしてきた友人たちが口癖のように言っていたのを思い出す。さっきの四段ピラミッドでいえば上から二段目だ。 政府・国際機関の直接介入と現地コミュニティ・エンパワーメントのパッケージ、民間含むステークホルダーの巻き込み、 トップダウンとボトムアップの組み合わせ・・・UNDPのGSBプロジェクトで毎日呪文のように唱えていたお題目がここでも。

 * * *

日本は世界でどんな新しい役割を果たしていけるのか。企業は社会でどんな新しい役割を果たしていけるのか。 科学技術は人間にとってどんな新しい役割を果たしていけるのか。 どれも膨大な数の人達が大変な努力を注いで答えようとしている問いばかりだし、 いろんな分野でこれでもかというくらいに説明が試みられ提言がなされているし、 各部門の最前線の実務家はすさまじい情熱を注いで日々格闘している。それでも、いざ、個人と個人が、組織と組織が、依って立つ文化規範、 価値体系の違いを超えて、個別に得るもの失うものを抱えて一緒に仕事をしようとすることがなんと難しいか。そういう類の状況で、 学びが起きて進歩がもたらされるために何が起きなければいけないか・・・規模感や文脈は色々あれど、 この半年間でハイフェッツTAをやりながら学生の皆と取り組んできた問いはこれだった。

答えのかけらに近づいたと思えば遠ざかってゆくような問いではある。一生、 手を変え品を変えてアプローチを続けるような問いなのかもしれない。が、 なんかこういう類の問題にぶつかって進歩したと思ったときに自分は興奮するのだな、という自覚がぼんやり生まれてきた気はする。うーん。 こういうことで飯が食える仕事って、何なのでしょうね。

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コメント


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これあっついイベントですね。
なにげにこんぺーさんの写真がのってるのが、うけます。
いつごろ方向性きまりそうすか?

こっちゃん | URL | 2007-12-18(Tue)13:09 [編集]


ちゃんとご飯たべとるか。写真やせとるからちょっと気になったわ。からだが資本やぞ。

牧田 | URL | 2008-01-13(Sun)21:51 [編集]


ん、元寮生の外山です。まだ上海にいます。
後輩君がコンサル転職するらしいので金平を思い出してぐぐってみたら発見。
・・・・ちゃんと飯食ってんのか・・最近・・・

waishan | URL | 2008-01-22(Tue)17:05 [編集]


>こっちゃん
このイベント、生ぽたっぽいでしょ。FIASっぽくもある。やっぱりこういう方向性がすきなんだけどなー。
>牧田・外山
うお。ごぶさたあけおめ。ご心配ありがとう。ピンピンしてますので大丈夫。
上海いいなー。

konpe | URL | 2008-01-29(Tue)17:04 [編集]


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