konpe's 夜の仕事記

民間セクター開発、BoP、Clean Tech

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演ってきた話

「もし、よかったら、ちょっと頼みがあるのだけど」・・・デボラ・アンコナ教授が遠慮がちに訊いてきたのは、2週間くらい前だろうか。

デボラはMITリーダーシップセンターの所長で、夏にやったSTeLA (日米の理系学生向けのリーダーシップ集中研修)のプログラムデザインを手伝ってくれたり、今は修論のアドバイザーをやってもらっていたり、 とてもお世話になっている人。何事かと思えば、リーダーシップセンターのアドバイザリー・カウンシル向けに一発プレゼンをぶってくれないか、 という依頼。センターの研究・教育活動の「成功事例」としてSTeLAのことをしゃべってくれ、という話だった。

リーダーシップセンターはSloanの中でリーダーシップの研究と教育を担っている組織で、 ピーター・センゲとかトーマス・マローンをはじめMITの組織論、行動科学、システムダイナミクス関係の立派な先生たちが名前を連ねている。 とはいえ、ハーバードでこれに相当する組織(Center for Public Leadership、ハイフェッツ教授が創始者)に出入りするようになり、授業運営に携わるようになった今思えば、 全学的に資金が潤沢なハーバードに比べてMITのは門構えもサポート人員も(たぶん研究資金も)なんとも心許ない。 同じMITでもファイナンスなんかを扱ってる部門は景気がいいし、昔ちょっと縁があったアントレプレナーシップセンターだって、 VCが集まるから羽振りがよかったのも頷ける。リーダーシップは確かに厳しいよなあ、大学も物量がものをいう世知辛い世界、、、 とおもっていたところだった。

MITリーダーシップセンターのアドバイザリー・カウンシルに入っているのは、MITコーポレーション (非営利法人MITの持ち株会社?みたいなところ)のチェアマンとか、通信会社、投資銀行、航空会社、 ハイテクメーカーの前CEOとかベンチャーキャピタルのマネージングディレクターとか、MITにゆかりのある重鎮ばかり。 こういう人達に業績を説明するということは、センターへのリソース投入と業容維持・拡大に関わる大事な話に違いない・・・。 お歳を召した方々にプレゼンするのは、仕事上それなりに慣れている。多少の恩返しができれば、と二つ返事で引き受ける。

そんなわけで、昨日が発表当日だった。与えられた時間は5分の発表と10分の質疑応答。

50-70歳代くらいの面々が15人程、テーブルを囲んでいる。僕の前に発表しているのは、 センター主催で企業向けの中堅幹部向けリーダー育成プログラムを運営している若手教授 (エグゼクティブ向け企画はMBAの学費とあわせてビジネススクールの大事な収入源)。プレゼン前半が終わらないうちに、 いちばん重鎮そうな方から質問が飛ぶ。「Distributed Leadershipはわかったけど、 倫理とかIntegrityなんかもリーダーシップの大事な要素じゃないか。ちゃんと扱ってるのか」 「コンサルティング会社と競合しそうだが、業界も業務も分かってる連中とくらべてMITの学者がこういう研修をやる比較優位は何だ」、、、 びしびし焼かれている。うむむ・・・、一番手でなくてよかった。スクリーンに写真ばかり映してしゃべり倒すつもりで来たので、 つっこまれポイントをみながら頭の中で話を再構築。順番が来る。センターがやってる教育課程を通った学生のナマの話をきいていただきたい、 という紹介。「えー、今日はデボラの『商品』を代表してお招きいただきました。欠陥商品でないことを祈っています」軽い笑い。デボラから、 スローンだけじゃなくKSGとかメディアラボで色々やってる学生です、彼がやってる活動はなぜかMBAじゃなく理系むけ、 みたいなうまい前フリ。

「なんでこんなことやってるのか、という話から始めたいと思います。僕は日本から留学に来て、ぜんぜん違う分野をあちこちかじって、 実にいろんなことを学んで、今もまだ頭の中はぐちゃぐちゃで、卒業後に何をしたいのかもノーアイデアです。でも一番重要だったことは2つ、 『現実』と、『可能性』、についての学びだったと思っています」

今更言うまでもなく、世界はますます複雑さを増していて、ビジネスの機会は広がっているが、 同時に人類はかつてない課題に直面している。気候変動、グローバリゼーションや経済危機に伴う貧困拡大、巡り巡って起きるテロや、 開発を阻む病気との戦い、、、ビジネスが問題解決に果たせる役割は大きいが、政策がやる仕事もまだまだあるし、 科学技術にも途方もない貢献が求められている。でも、どんな分野の専門家やテクニカルな知見よりも、 一番欠けているのは専門分野や国境や文化を跨いだ協業、Collective Effortを動員するリーダーシップ。 これがいかに難しいか、現実を散々目の当たりにした。一方で、そんなリーダーシップは生まれ持った資質でなく教育・開発できるもの、 一部の人のものでなく組織や社会にあまねく浸透させるもの、というDistributed Leadershipの考え方に触れ、 実践の場に参画して、人が変化を起こす可能性に魅了された。・・・翻って、 自分が恩恵を受けたそうした機会は誰にでも手に入るといえるだろうか。 ビジネススクールや政策大学院には強力なリーダーシップセンターがあるが、科学技術を通じて人類の将来の一角を担う理系の学生はどうか。・・ ・なければ作ればいい、ここはMITなんだから。

いいかんじに頷いている聴衆に、目を輝かせるSTeLA参加者たちの写真を大写しにしてプログラム内容をしゃべる。 NHKがきて全国に流れたし、財務大臣がわざわざ来てくれて科学技術政策の議論もした。 全員が身に付けたウェアラブルセンサーが組織学習の一部始終をとらえていて、世界に例のない研究プロジェクトの実験場にもなった。 参加者個別の10日間の苦闘と学びのエピソード。あいつは人生変わったとまで言ってくれた、こいつは今や来年向けの企画運営チームの中核。・ ・・彼ら彼女らの感謝の言葉をそのままMITに返したい、僕はここで教わったことをそのまま伝えただけなので。 この場を借りてデボラにありがとう。・・・以上。

重鎮はすっかり和やか。「これ、今回初めてやってここまでできたのか?」 そうです。1年半もかけて準備しましたが、 主催者たちが目に見えて一番成長してました。「来年もやるって、ファンディングは大丈夫なのか?」 えっ、 スポンサーになってくださるなら喜んで。「日本人はイノベーティブじゃないというステレオタイプを、今日から見直すことにする」  有難き幸せ。

そんなこんなで、あっという間に時間切れ。続きには残念ながら参加できなかったものの、アジェンダには 「リーダーシップセンターの今後のストラテジー」とか本題めいたことが書いてあった。どうなったかなあ。恩返しができていればいいのだけど。

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コメント


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どうもお久しぶりです。
環境の谷澤です。
この報告、大変感激しました。
何かホント改めて、やって良かったなーって。
相変わらずお忙しいようですが、体には気をつけて頑張ってください。

ken tanizawa | URL | 2007-11-07(Wed)12:41 [編集]


おひさしぶりです。
めっちゃ鳥肌ものです。
健さんに引き続き、ちょっとでしゃばってみました。
素晴らしい機会だったようで。
またメールしまっす。

koya | URL | 2007-11-12(Mon)17:49 [編集]


おおー。たにざわさんにこーやさん。日本に帰ったらまた遊んでくださいね。もうあの夏が遠い昔のようです。

konpe | URL | 2007-11-29(Thu)15:53 [編集]


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